エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「ちょっと淳司! 夏合宿の段取り、どうなってんのよ!」

 やってきたのは、データ管理課の藤谷紫音だった。
 私の同期であり、そして二階堂さんの恋人でもある。

「なんだよおまえ! 出社時間はまだだろうが」

「会社に泊まりだったのよ。お盆前の地獄の納期ラッシュ」

「うわ、ご愁傷様」


 紫音のオフィスは、ここの上にあるアウトソーシング部門のフロアだ。
 けれどときどき、こうやって営業部にやってくる。

 いつもふたりは人目をはばかることなく仲良くしていて、二階堂さんも紫音の前だけでは素の顔を見せていた。


 紫音は、私の手を握ったままの二階堂さんをぐいっと引きはがした。

「淳司。私がいないところで桃ちゃんを口説こうなんて、いい度胸してるじゃん」

「口説いてないし! 爪がきれいだったから見せてもらってただけだよ」

「淳司がネイルに興味あったなんて、知らなかったし~」

 紫音がニヤニヤしながら、二階堂さんの顔と私の顔を見比べた。
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