エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 おそるおそる荷台に乗り、二階堂さんのTシャツの背中をつまんでみる。

「そんなんじゃ振り落とされちゃうよ。しっかり僕の体に腕を巻きつけて」

 彼は私の手をつかみ、ウエストにまわさせた。
 思ったよりもがっしりした背中。
 ぱっと見は細いのに、意外と厚みがある。

「じゃ、いくよ」

 ペダルを踏み込んで、二階堂さんは自転車をスタートさせた。


 海岸沿いのサイクリングロードを走る自転車。
 潮風が頬にあたり、ものすごく気持ちがいい。

 岬の先端にある体育館までの道のりは、ゆるい上り坂だ。
 自転車をこぐのも意外と体力がいるのか、二階堂さんの心拍数が上がっていく。

(こんなことなら、もうすこしダイエットしておくべきだったなぁ……)

 私の心臓も、ドキンドキンと跳ねている。


 ふと顔を上げると、ちょうどうしろを向いた二階堂さんと目が合った。

「ま、前見てくださいっ! 海に落っこちたら大変です!」

 ドキドキしている自分の気持ちを悟られないように、あわててそう告げる。

「ずいぶんおとなしいから、大丈夫かなって」
「大丈夫ですから、前を見てください!」

 前に向きなおった二階堂さんの背中に、私はペタンと頬をつけた。

 ――やっぱり、好きかも。
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