エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 戻ってきた紫音が私の横に座る。
 そして憮然としながら食べかけのお弁当のふたを開けた。

「まったくもう、油断も隙もありゃしない。桃ちゃん、変なことされなかった?」
「うん、なんにも。私がひとりだと思って、誘ってくれたみたい。スイカもあるよって」
「ふぅん。スイカで釣ろうってか。浅いね」

 何が浅いのかはよくわからないが、なぜか紫音は私と本社の社員を近づけたくないようだった。

「そういえば『またあとで』って言ってたけど、何かあるの?」
「また体育館で会いましょうってことじゃないのー?」
「そっか。体育館に戻ったら、挨拶しといたほうがいいかな」
「いい、いい! 桃ちゃんはそこまで気を遣わなくていいから!」

 紫音は慌てて私の申し出を却下した。

 考えてみれば、私はバレー部にはなんの関係もない部外者なのだ。
 あまりウロウロしてはまずいのだろう。

「わかった。ごめんね」

 にこっと笑ってみせたけれど、紫音は難しい顔をして、なにかを考えこんでいるようだった。
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