エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 テーブルの上に、差し入れのバーベキューと飲みものを並べる。
 二階堂さんは「いっぱい食べてきたから」と、片膝を立てて向かいの椅子に座り、ペットボトルのスポーツドリンクを手に取った。

 私は緊張しながら、持ってきてもらった食べものに箸をつける。
 柔らかく火がとおったキャベツは、とてもおいしかった。

 ふと顔をあげると、こっちをじっと見ていた二階堂さんと目が合った。
 そのとき、紫音の言葉が脳裏によみがえった。

『私に遠慮なんかいらないんだからね』

 それって、二階堂さんに告白しろということなのだろうか。
 合宿所の狭い部屋にふたりきり。告白するには、絶好のタイミングだ。
 けれどまだ、心の準備ができていない。


 外では花火が始まったようだ。
 キャーッとかうわーっという歓声とともに、花火の光がときどき窓辺を照らす。
 四角い窓の額縁に描かれる、大輪の光の花。

「電気消して、窓際で見てみる?」
「え?」
「あ、ほら。うっかり窓辺に立って、ほかの奴らに姿を見られるとまずいし」

 私が返事をするよりも先に、二階堂さんは立ち上がって部屋の明かりを消した。

 パァンという軽快な音とともに、大きな打ち上げ花火が夜空を照らす。
 部屋の明かりを消したせいか、闇のなかに溶けて消えていく小さな炎の粉まで、はっきりとらえることができた。
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