エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「きれいですね。なんだか田舎を思い出します」

 ここ数年は、実家のある秋田で夏休みを過ごしていた。
 お盆には迎え火をたき、玄関先で花火をするのが、地域の習わしだった。
 必ず家族みんなで出かけていた大曲の花火大会。全国的にも有名な花火の饗宴は、夢のように豪華だった。

 けれど、それに負けないくらい胸にしみる光景が、いま目の前で繰り広げられている。


 返事がないのを不思議に思い、振り返ろうとすると、いつのまにかうしろに立っていた二階堂さんに背中から抱きしめられた。

 長くて筋肉質の腕が、私の体をすっぽりと包む。
 風に吹かれてクールダウンした体が、ふたたび熱を帯びてくるのがわかる。

「……今日、桃ちゃんが来てくれて、すごく嬉しかった」

 背中からトクトクと響いてくる、早鐘のような彼の心音。
 二階堂さんも緊張しているのだろうか。
 体がとても熱い。
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