エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「え? え?」

 頭が混乱する。
 紫音に頼んで用意してもらった?
 それって、最初から私のために用意されていたということ!?

「やっぱり根回しって大事でしょ。最初からこういうつもりだったし」
「こういうって、んん……!」

 それ以上の追及は許さないと言わんばかりに、彼は私の唇をふさいだ。


 どうして二階堂さんが営業でトップの成績なのか、今わかった。

 用意周到でタイミングを逃さない。
 にこにこと爽やかな笑顔を振りまいているけれど、じつはしっかりと頭のなかで緻密な計算をしている。

 紳士かと思えばけっこう強引なところもあったりする。
 でもあの甘いほほ笑みで、なにもかも許せてしまうのだ。

「余計なことは考えないで、集中して」
「だ、だって、紫音ちゃんが帰ってくるかもしれないし……」
「紫音の部屋なら、ちゃんと別にあるから。ここは桃ちゃんのために僕が用意した部屋」

 にっこりと魅惑的なほほ笑みを浮かべたあと、彼は「だから、ね?」と耳元でささやいた。

(……負けた!)


 彼は王子様ではなかった。
 爽やかな笑顔の裏でいろんなことを画策している、とんでもない策士。
 最初から、彼は私を手に入れるために、あらゆる罠をしかけていたのだ。

 けれど強気な言葉とはうらはらに、今も二階堂さんは、不安げに私の表情を探っている。
 いろんな感情が、瞳のなかで交錯しているように見える。
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