ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー
水
知ってたんだ。
でも知らなかった。
気付くことが出来なかった。
こんな時に忍の力を発揮するなんて、ズルい。
江戸へと向かう事になった新選組は順道丸と富士山丸に別れて乗船。
順道丸は富士山丸よりも早く出航する為負傷者を主に乗せ、元気すぎる組長及び隊士は富士山丸に、となった。
…ハズなんだけどアタシは負傷者にもかかわらず富士山丸へと連行されそのまま出航。
何故だ。
「ちょっと新八っちゃーん、何で俺はこっちに居るの何で拉致られてるの」
「あーー、まあ、な。…土方さんが呼んでる」
「…?」
いつになく歯切れの悪い新八っちゃんのもの言いに自然と眉根が寄る。
何かあったんだろうか…違う、何があったんだろう。
慣れていない複雑な造り…それも揺れる船の中、アタシを気遣いながら奥へと進んでいく。
案内役が左之でなく新八っちゃんなのはありがたい。
左之だったら何も考えず手を引き、最終的には面倒くさいだの遅いだの言って担がれそうだ。
まぁそれを先読んで土方も新八っちゃんを指名したんだと思うけど。
「愁、この扉開けたら居るから」
「うん、ありがと新八っちゃん」
去っていく気配を背後に感じながら扉の向こうを探る。
中から話し声が聞こえる、それと…?
「失礼、します」
「おう、来たか」
入って目の前には土方の気配。
奥には…
「…丞?」