ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー
「軽いし動きやすいと思うのは分かるけど」
「別に義務化にはしねぇさ」
「なぁんだ、
「平隊士は、な」
「え゛」
付け加えたように言う土方に左之は愕然とした声をもらす。
「私も着ないぞ!」
なぁんて胸を張って答える近藤さん。
…え、胸張るとこ違くね?
そこ胸張っちゃダメなとこじゃね?
「愁は?どうすんの?」
「ん~」
「愁は身長高ぇから良く似合いそうだな!」
「左之オマエ喧嘩売ってんのか」
「その“ずぼん”の方が着替えも楽になるんじゃないのかい」
「ん~~」
そりゃこっちの時代来る前は普通に履いていたんだから慣れてるっちゃ慣れてる。
着替えやすいのも分かってる
が。
「俺…やだなぁ」
「「「(……意外)」」」
「(ま、だろうな)」
なんて思われていたなんて露知らず。
「洋装になったら髪切らなきゃいけないんでしょう?」
それはちょっと嫌だなあ~
とぼやく。
女っぽくないアタシが唯一女らしい見た目が髪の毛(長さ)なのだ。
そりゃこっちの時代じゃ土方や沖田さんとかいるからそんな風には見られないが、腐っても現代では女子高生だったんだ。
そんな軽くバッサリ、なんて出来ない。
…そうだよ、忘れかけてたけどアタシ女子高生だったんだよ。
「わかる!わかるぞぅ、愁くん!」
がし、と力強く両手を握ったのは女子高生の思考なんて微塵もなさそうな近藤さん。
なんだなんだ、いきなりどうした、ご乱心か。
「私も髷を切りたくないんだ!」
これは武士の魂だこれを切ったらうんたらかんたらうんでなでんがな……
…要するにどんなことをしても洋装にはしない、したくない、ってことで良いですか。
近藤さんの熱弁を我知らぬ存ぜぬで帰る足音が2つ。
くそう、アイツ等にげやがったな。
土方によって近藤さんが止まるまで、アタシはずっと髷について聞く羽目になった。
…アタシは絶対髷はしないよ、近藤さん。