空と君との間に
Prologue
記憶は曖昧だけど、まだ幼い頃…


俺には仲の良い友達がいた。


髪が長くて、色の白い女の子。


小学校の校舎と校舎の間に、たくさんの遊具があって、俺達はよく、昼休みや放課後にそこで遊んでいた。


意味もなく、朝早く登校しては、ブランコに乗りながら色んな話をした。


初恋の相手だった。




バレンタインデーが近付く頃…


クラスのマセた女子達は、その話題でもちきりだった。


正直俺は、バレンタインデーが何なのかを、よく理解していなかった。



ある日の事…


彼女は、今までしたことのない、少し照れた様な表情で、こう言った…



「ねぇ、チョコレート。義理がいい?本命がいい?」



俺は多分、こう答えた…



「わかんない…義理?」



結局俺は、その子にチョコレートを貰ったかどうかは、よく覚えていない。


その出来事の少し後だったと思う。


彼女は転校した。


今、思い出すと、何だか切ない気持ちになる。


親にねだって買ってもらった、大切なオモチャを無くしてしまった様な…


俺は、その時泣いたような気がする…




『みすず』




彼女は確か、そんな名前だった…


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