空と君との間に
ドックン…ドックン…


ドックン…ドックン…


真っ白な肌に…ほのかに、ピンクがかった頬…


こんなに間近で見たのは、初めてかも知れない。


自分の顔が、熱くなるのが分かる…


…愛おしい寝顔。


俺はずっと願ってた…


美紗に初めて出会った…自転車ですれ違った、あの瞬間から…


この子と、こうする事を…


いいのか?相手は寝てるんだぞ?


…………………


「み、美紗……」


俺は目を閉じ、美紗に被さるように、体重をかけた…


………次の瞬間…




バッチーーーン!!


その音は、静かなスタジオ内に、響き渡った。


え?!…目を開くと、美紗は目を開けていた。


「空君…ひどいよ…ひどいよ!!」


「いや、ちがっ…」


美紗は、急に起き上がり、走ってスタジオを出ていった。


俺はただ呆然とした…


どこか知らない場所…そこには、何もない…そんな場所に、置き去りにされた気分だった…


「み…すず…」


…美紗っ!!


俺は我に還り、必死に追い掛けた。


美紗が、どこに向かったかは検討がつかないが、とにかく走り続けた。


近くにある公園、コンビニ、学校、可能性のある場所を、隈なく探し回った。


そして、数十分後、駅前の時計台の前に座り込む、美紗を見付けた。




「美紗…ごめん、俺…あんな事、するつもりじゃなくて」


「………」


無言だ…やっぱり、怒ってる…


「俺、…美紗に抱き着かれて、あの…理性が飛んだっていうか…」


「もう、いいよ…」


「え?」


「私の方こそ…ごめん。ビックリしただけなの…ふと目を覚ましたら、空君が私に……だから、つい…」


本当に、ビックリしただけなのか?やっぱり、俺じゃあ、駄目だったんじゃないのか?


キスの相手は…


俺は、そう言いたかったが、聞く勇気が無かった。


「もう忘れよう!みんなの所に戻ろうか」


「…あぁ、本当ごめんな…」



忘れられる訳がない…

俺は本当に大馬鹿野郎だ!

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