空と君との間に
連絡を取り、再びスタジオに来て貰った。意見を聞く為に、亮も呼び出した。


思った通り、美紗は、普通じゃなかった…


美紗は、どのメロディーも、すぐに自分のものにし、アコースティックギターではあるが、曲の強弱、盛り上がり、表現…全てにおいて、問題無かった。


俺達のアドバイスは、全くと言っていい程、必要なかった。


久しぶりに聞く、美紗の歌声は、やはり、聞き手の耳に素直に入り込む、不思議な感じを持っていた。



ちなみに、ライブでは、初体験の歌い手を、かなり戸惑わせる。


自分の声が、あまり聞こえないのだ。


カラオケボックスの様に、狭い場所ではない…しかも、数倍の音量で演奏される。


演奏が行われる、ステージには、足元に『モニター』といって、演奏されている音や、自分の声が、耳に入るようにする、機材が設置されている。


それでも、初心者は、聞こえづらい。


プロのミュージシャンが行う様な、凄く広い会場になると『モニター』でも無理があるため、イヤーホンから流れるようにもなっている。


しかし、今回の演奏は、アコースティックギターのみだ…その心配を、しなくて済むからよかった。



「…いい感じだ…俺、美紗が唄うの、初めて聞いたけど…」


「…いいだろ?」


「あぁ、想像以上だよ!鳥肌立ったぁ!」


亮は、興奮していた。


「俺達、行けるかも知れない…!」


やはり亮も、俺と同じ考えになった様だ…


『向こう側』が、垣間見えたんだろう…


「じゃあ後は、練習しまくるだけね!」


「あぁ、今週末は、本番だ!」


「楽しみだな!!…俺は、出ないけど…」


「亮君も『seraph』なんだから、しっかりしてよね!」


「嬉しいこと言ってくれるなぁ!いずれはこの曲に、俺のドラムが入るんだもんな!」


「当たり前じゃない!イベント、成功させようね」


「よっしゃあ!気合い入れて行くぞぉー!」


俺達は、円陣を組み、気合いを入れた。


今週末の、成人式イベント…


500人か…


俺は、そのシーンを想像して、武者震いした。

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