空と君との間に

みすず

彼女が市外から電車で通う、同級生だということは、すぐに分かった。


村仲優子に聞いたからだ。


入学してから、クラスの男女共、大分、仲が良くなっていた。


といっても、彼女に一目惚れしたから教えてくれ!…などとは口が裂けても言えず…


あの雨の日に、一緒に歩いていた時の話から切り出した。


ちなみに、俺がある女に一目惚れし、その子のことで頭がいっぱいになっていることを、知る者はいない。


隆志にも、告げてはいなかった。


そこまで隠す必要もないのだが、一目惚れに対して、少し恥ずかしい気持ちもあり…


いよいよの時に打ち明け、相談や協力を仰げばよい、と思う気持ちもあった。


おそらく、村仲優子にも、悟られてはいないだろう。




村仲優子と彼女は、中学校からの親友らしい。


ならば、自分がこの恋を成就させるにあたって、村仲優子が重要人物となる事は、ほぼ間違いないだろう。


このまま良い関係を築いていかなければ…




あ…そういえば名前を聞き忘れた!


惚れた女の名前も知らんのか、俺は…


さて、どうしたものか…


どうやって調べる?


いまさら優子に聞くのも、何かと危なっかしいし…


もうAクラスにいる事も分かっているのだから、直接乗り込むか…


それが最短距離だと思った。


Aクラスのやつと話をしていると、彼女の名前を呼ぶやつがいるはずだ…


俺はAクラスに向かい、この間友達となった、向井と鈴木に他愛のない話をし始めた。


よし、彼女はいる!


緊張のあまり、顔を直視することは出来ないが、いることだけは確認できる。


数分後、俺の思惑はすんなり成功した。



「みすず〜!」


彼女を呼ぶ声がした。
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