奏でるものは~第4部 最終章~
「まあ、ケンカできるなら仲は良いってことね」
優人さんのお母様の言葉に恥ずかしくなる。
「仕事のことは、今まで通りが希望ならそれでいいだろ?
でも、仕事の内容はお互い話さないのが約束だな」
「はい」
「じゃ、このまま結婚すればいいさ」
優人さんのお父様の言葉に驚く。
「まあ、結婚式とかはどうするのか決めなくてはいけないけど…歌織は希望あるの?」
「………盛大にすると大変だからいらないかな」
兄の結婚式を思い出した。
「じゃ、海外で家族だけでする?」
「それもいいわね。
明良の結婚式が年明けにあるから、その後に、でもいい?」
両家の母が話を進めていく。
このまま結納や結婚の日取りまで決まりそうだ。
優人さんの顔をみると、戸惑っているのが分かる。
思わず口を挟んでいた。
「ちょっと待ってください。
急に話が進みすぎて、ついていけないのですが」
「そうか。
でも、折角このメンバーが揃ったんだから決められることは決めたらいい」
「じゃ、結婚は許してくれるってことですか?」
優人さんが私の父を見て言った。
「歌織をよろしく頼むよ」
「ありがとうございます」
微笑んで優人さんに頼んでくれた父が、私をみて頷いた。
胸が熱くなって、涙がこぼれた。