奏でるものは~第4部 最終章~
出掛けたのは、懐かしい公園だった。
高校の時に、バーベキューの後、告白された海の横の公園。
ベンチも今はキレイになっていた。
「相変わらず、誰もいないのね」
「そりゃそうだろうな」
ベンチに座って太陽が銀色に波を照らす海の方を見ていると
「歌織」
手をとられた。
その手を見ると、指輪を嵌めてくれていた。
「これ……?」
驚いて指輪をみていると
「俺と結婚してほしい」
顔を上げると、緊張気味の優人さんがいた。
「……よろしく、お願いします」
笑顔で言うと、目を細めてホッとしたような笑顔になった優人さんを見て嬉しくなる。
「はぁ、良かった、ちゃんと言えた。
こないだは、フライング、というか、見合いするって言われて、ちょっと焦ったから」
「そうだったの?」
「だから、指輪もなしで気持ちばっかり先走って……悪かった」
指輪をよく見ると、ピンクゴールドのリングにダイヤが3つ埋め込まれている。
「いいの。プロポーズは本当に嬉しかったから。
キレイな指輪。
これは、毎日はつけられないわ。
ね、今から二人で指輪買いにいかない?
一緒に買うの、ペアリング」
驚いた顔の優人さんが、フッと笑って
「そうだな、行くか」
と言ってから、ゆっくり近づいてきて、キスをする。
まるで、神聖な誓いのキスのように。
「愛してる」
うん、と頷いた。