奏でるものは~第4部 最終章~

翌日、午前中に約束通り来てくれた優人さんは、唯歌の仏壇に手をあわせてくれた。

「唯歌のことも?」

「長谷野功介とは、幼馴染みで、ずっと一緒にいたので、知っていました」

「唯歌は、優人君の前では、どうだった?」

「サイタ家とは知らなかったけど、明るくて優しくて、でも、上品な振る舞いができる人でした。

功介と仲良くて、いつも楽しそうでした」


遺影を見ながら話す優人さんが、懐かしそうに言った。


「そうか。唯歌のことも知ってるんだな、ありがとう」


寂しそうで、でも嬉しそうに両親の顔が微笑んでいた。

「昨日は、指輪を貰ったと聞いたよ。
ありがとう。

本当に歌織をもらってくれるんだな?」

「よろしくお願いいたします」

お茶を飲みながら、結婚式や住むところについて改めて相談するが、二人がいいなら、と特に何も言われなかった。


「ただいまー。
ユカ、こんにちは、だろ?」

リビングに声が響く。

「お兄さま?」

「そう、顔見に来るって張り切ってるのよ?」


母の言葉と同時にリビングに続く襖が開いて、兄と長女のユカがいた。






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