奏でるものは~第4部 最終章~
披露宴の後、最後まで招待客を見送り、様々な荷物を運び、泊まる部屋に戻ったのは9時を回っていた。
「お疲れ様」
「ああ、歌織も疲れただろ?」
ネクタイを緩めながら座っている姿は、やっぱり疲れているようにみえる。
「まあね。
披露宴は大変ねぇ。
お兄さまの時もすごかったけど。
幸せそうで良かった」
「ま、兄貴もほっとしただろうな。
披露宴、したくなった?」
ニヤリとして聞いてくる。
「いや、もう満喫しました」
「次男で良かった」
思わず笑った。
「野心もないの?」
「兄貴を越えようとは思わないな。
小さい頃から期待に応えようとする努力ができる人だから。
逆に俺には海外を見てこいってことだったからな。
自分で学べってことだな」
「そっか」
「お前は?」
私?
「唯歌と比べられたりしなかった?」