奏でるものは~第4部 最終章~
姉がいた頃を思い出す。
「……ないわ。
私は、芸事が好きで楽しんでたから、日舞も筝も、技術というか、階級としては私の方が上になってたのよ。
姉は将来はバリバリ働くつもりだったから、そんなことに拘ってなかった。
私が上になった時も喜んでくれたわ。
でも、姉はやる気がなくてもソコソコできたからセンスはあったんだと思うけど。
唯歌がいても、私は、結局この仕事してたでしょうけどね」
「俺から見たら、唯歌はいつも明るくて、サバサバしたキレイな子、だったからな」
「私より着物は似合ってたわ」
「そうかもな」
フフ、と笑って姉への思いからの涙を閉じ込める。
やっぱり一緒に歳をとっていきたかった。
「私達が結婚するの、驚いてるかもね」
「そうだな」
優しく抱き締めてくれる。
思い出して泣きそうな心を見透かされたのかもしれない。
「歌織は、もう、一人じゃないから」
「……うん」
涙が頬を伝った。