奏でるものは~第4部 最終章~
引き渡しが完了して、翌日には家具も入ったらしい。
その週の金曜日の夜は、例年のごとく、龍くんの会社のブランドのパーティだった。
優人さんも出席しているが、パーティでは席が離れている。
私は、兄と兄嫁と一緒に食事をしていた。
「お疲れ様です」
「お、優人。もう食べたのか?」
「はい。そろそろ歌織と……」
「そうだな、行ってこいよ」
「……そうね」
渋々立ち上がった。
優人さんと結婚の挨拶に回る。
正直、あまり気が進まなかった。
「結婚することになりました。
今後とも宜しくお願いします」
優人さんが話し、笑顔で名刺を渡したりお辞儀をする。
おめでとう、と祝福をいただくが、如月家の次男を狙っていた家の人からは
「キサラギとサイタがねぇ」
とチクリとイヤミを言われることもある。