奏でるものは~第4部 最終章~
「俺の荷物はほとんど終わった。
もういつでもここで生活を始められる」
「早いわね。
ね、優人さん?ピアノと箏、ありがとう」
「いや、初めてサイタ家で音楽室を見た時、やっぱりいるなって思った。
お前の両親にも色々聞いて、手伝ってもらったよ。
防音してあるからいつでも好きな時に弾いたらいい。
歌織の音は安心する。
歌織の音は、歌織の気持ちだから、俺はいつでも受け止める。
愛してる」
固く抱きしめあって、キスをした。
身体を触ろうとする優人さんの手を、止めた。
「ダメ」
「なんで?」
「まだちゃんと住んでないから」
「……お預けかよ」
「我慢してね」
優人さんの額にキスをして身体を離した。
結婚式まであと2週間。
来週は私の荷物を運び入れる。