奏でるものは~第4部 最終章~
目線を手元に落としたままの優さんがさっきより低い声で言う。
「あの時、お前は傷ついたんだろ?」
ちょっとドキリとしたが、なるべく明るい口調で言う。
「そうね、何も手につかなくなるくらいに。
それって依存してたのよ。
だから、別れたの。
誰かの言動で、自分が自分で無くなることは、私自身を無くすことだと思ったから。
優さんに会えなくなるのは、寂しかったし、優さんに新しい彼女がいたら、どう思うのか、分からなかった。
だから、優さんのことは何も、誰にも聞かなかった。
サイタに就いたのは、もう、宿命よね、それだけ。
いつか仕事絡みで会うかもって思ってたけど、この前のパーティでは本当に驚いたわ。
会わなかった7年で違う人間になってるかもしれない。
だから、今の立場を考えて、ゼロに戻ろう?」
「……許すも何も、俺は謝ってもらうつもりもなかったんだ。
フッ、ゼロからか。
連絡はOKなんだな?」
私をみて、ニヤリとした優さん。
「大丈夫だけど?」
「じゃ、覚悟しとけよ?」
「……」
受けて立とうじゃない。