奏でるものは~第4部 最終章~
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
既に会場にいた芦田さんたちに声をかける。
「おはようございます」
「重役なのに早いね」
先輩である芦田さんに言われる。
「重役でも下っぱですからね」
笑いあっていると、会場に如月兄弟がスーツ姿で入ってきて近づいてくる。
何事も無かったように二人に会釈をすると
「今日はありがとう。よろしくお願いします」
明良さんが声をかけたので全員が背筋を伸ばす。
「おはようございます。こちらこそよろしくお願いいたします。
10時頃に弾き手が来て1度演奏させてもらいますが、聴いていかれますか?」
「歌織さんはもう聴いているのですよね?」
「はい」
急遽弾くことになったときのために何度か練習を一緒にしてきた。
「それならもう、俺たちは本番に見せてもらいますよ、なあ、優人?」
「それでいいですね」
その時、会場のドアが開いた。
「あ、弾き手が来たので挨拶だけよろしいですか?」
弾き手の数人と如月兄弟と担当者を引き合わせて挨拶してもらう。
「楽しみにしてますよ」
笑顔で去っていく如月兄弟を見送り、優人さんの仕事用笑顔を下を向いてこっそり笑った。
「じゃあ、リハしましょうか。
太鼓の位置から確認して、開場のピアノもよろしく」
如月コーポレーションのスタッフも見守る中、リハーサルとして1度通して演奏した。