奏でるものは~第4部 最終章~
誕生日の夕方
約束したホテルのロビーに着きソファで待っていると優人さんが見えたので近付くと、すぐに気付いてくれた。
「待ったのか?」
「そうでもないわ」
と二人で歩き出した。
以前に行ったレストランとは別のレストランに入り和食のコースをゆっくりと味わった。
食べ終わり、その後も席を立たずに喋っていたが、さすがに遅くなると両親に会えずに終わってしまうので
「そろそろ帰るわ……」
と、席を立った。
ホテルのロビーまで来ると優人さんが
「これ」
内ボケットから箱を取り出していたのを無意識に手を出して受け取って、驚いた。
「誕生日だろ?」
「……覚えて……?」
「あたりまえだろ?
お前が生まれてなかったら会えてない、だろ?」
「ありがとう。あけても?」
と言いながら開けると、有名な宝石店のブレスレット。
細いゴールドチェーンにダイヤが3つあしらわれている。
「きれい。ホントにもらっていいの?」
「ああ」
「ありがとう、大切にするわ。優人さんのさっきの言葉と一緒に」
タクシーに乗るまで送ってもらい、家に向った。
そう、生まれたから生きてる。
優人さんに会えた。
両親に感謝する日、だと、優人さんの言葉が教えてくれた。