幸せポイント
☆☆☆

いつもより1時間も早い通学路には誰の姿もなかった。


いつものサラリーマンも、荷物を持ったお婆ちゃんも、学生もいない。


4人もいるというのに会話もないまま、あたしたちは1軒の廃墟の前まで来ていた。


庭はなく、道路に面した玄関にはスプレーで落書きをされている。


長年誰にも使われていないのだろう。


壁のあちこちにヒビが入っているが、修復されている形跡もなかった。


「こっち」


美鈴と香織は家の横へと回り込んだ。


同じように後を追いかけていくと、1カ所窓ガラスがはまっていない箇所があるのがわかった。


「ここ、学校をサボる時に丁度いいの」


美鈴にそう言われて部屋の中を覗き込んでみると、フローリングの部屋にはオヤツのゴミが散乱していた。


昨日の屋上と似たような状態だ。


あっちが男子たちのサボリ場だとすれば、こっちは女子たちのサボリ場みたいだ。
< 126 / 236 >

この作品をシェア

pagetop