幸せポイント
パニックになっているわけでもないし、混乱しているわけでもない。


ただ、こうした方がずっといいと思っただけだった。


身を乗り出すと自然と足が窓枠から外れた。


後は重力に任せるだけだった。


地面を彩る木漏れ日が急速に近づいてくる。


こういう時、人はスローモーションに見えたとか、走馬灯が見えたとか言うけれど、そんな時間はどこにもなかった。


なにも考える暇もなく、なにも思い出す暇もなく、地面が目の前にあって……。


とりあえず、目を閉じた。


目を開けたまま地面に着地するものなのかどうかわからないから。


一旦目を閉じると次はもう二度と開かないだろう。


そう思っていたけれど……。


「起きてくれる?」


そんな声が聞こえて来て、あたしはハッと目を開けた。
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