幸せポイント
事実とは少し異なるけれど、それが最善の説明だと思っていた。


「相手は5人で、到底太刀打ちできなくて……」


そこまで言い、喉に言葉を詰まらせた。


『イジメのターゲットになっている』その言葉が引っかかり、どうしても出てこない。


緊張で手が震えて洗濯物も上手に畳む事ができなくなっていた。


「……蘭は今、イジメられているの?」


静かな声で、お母さんがそう聞いて来た。


手を止め、真っ直ぐにあたしを見ている。


あたしはハッとして顔を上げてしまった。


お母さんの顔を見てしまうと打ち明けることができなくなりそうで、絶対に見ないようにしていたのに。


お母さんは眉をよせ、苦痛を耐えているような表情を浮かべている。


あぁ……。


あたしはなんて親不孝者なんだろう。


あたしがイジメられているという事実だけで、これほどまで親を苦しめてしまうなんて。
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