幸せポイント
瞬間、教室の中が静かになる。


みんなの視線が2人へ向かっているのがわかり、あたしは周囲を見回した。


それは昨日までとは少し違う雰囲気だった。


「ちょっと、待っててね」


家族の話をしていた友人が立ち上がり、2人の方へ歩いて行く。


行く手を阻まれた2人は教室の途中で立ちどまり、友人と対峙する形になった。


そしてそれは突然始まった。


「昨日、あんたたちがなにしてたのか見たんだけど」


友人が、低い声で威嚇するようにそう言ったのだ。


あたしはハッとして早苗と久志を見た。


あの公園、昨日は草が刈り取られていた。


誰に目撃されてもおかしくはなかったんだ。


「はぁ? なんのこと?」


「とぼけても無駄! あたしだけじゃない、何人もの生徒が見てるんだから」


その声を合図にしたように、5人の生徒たちが席を立って2人の前に立ちはだかった。


みんな、見ていたのだ。


「俺たちだけじゃねぇよ? 他のクラスの奴だって見てるんだ」


1人の男子生徒がそう言うと、さすがに美鈴はたじろいた。


後ずさりをし、正樹の後ろに隠れようとしている。
< 205 / 236 >

この作品をシェア

pagetop