幸せポイント
けれどあたしは即座に反応できなかった。


今日集めた『幸せポイント』が減点されてしまうのが怖かった。


トイレの中には黒い光が充満し始めている。


このままでは『幸せポイント』がどれだけ減点されるかわからない。


「わかった。やる」


あたしは慌ててそう言っていた。


瞬間、美鈴の表情が明るくなり、トイレ内の黒い光が和らいだ。


それを確認したあたしはホッと安堵のため息を吐き出した。


美鈴の機嫌を取る事が『幸せポイント』を守ることにも繋がりそうだ。


「いいね、そうこなくちゃ」


美鈴は嬉しそうな声でそう言い、久志の体を無理やり個室へとねじ込んだ。


男子3人がドアを押さえて閉じ込める。


その様子を見ていると吐き気が込み上げてきたけれど、ここで逃げるワケにはいかない。


「あたしは何をすればいいの?」


「トイレのイジメの定番と言えば、これでしょ」


そう言って美鈴が掃除道具入れからバケツを取り出した。


水を被せるってことか。


美鈴が差し出してきたバケツを受け取り、蛇口へと向かう。


その時だった「そっちじゃないよ」と、美鈴が言ったのであたしは立ち止まった。


「え?」


「綺麗な水なんてつまらないでしょ」


美鈴はニヤニヤと不敵なほほ笑みを浮かべてそう言ったのだ。
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