幸せポイント
だけど、やらなきゃいけない。


あたしは久志がいる隣の個室へと足を進めた。


トイレにはたっぷりの水がたまっている。


掃除前の便器は汚れていて見ているだけでも気分がいいものじゃない。


「ほら、これ」


美鈴が水を汲みとるための柄杓を渡して来た。


これもいつもは掃除道具で使うものだ。


あたしは柄杓に汚れた水をくみ、バケツへ入れていく。


微かにアンモニア臭の漂う水がたっぷり入ったバケツを持ち、あたしは個室から出た。


美鈴たちがクスクスと笑い声を立てている。


個室の前にはいつの間にか脚立が用意されていて、いつでも久志の頭にこの汚水をかけられる状況ができていた。


もう、後戻りはできない。


「やめてくれ……やめて……」


久志の情けない声が聞こえて来るけれど、あたしはそれを右から左へと聞き流した。


そうだ、今までもそうだったように人の言葉を流してしまえばいいんだ。


どうでもいい会話をしていると思えばいい。
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