幸せポイント
ゼロ
やってしまった。


久志に汚水をかけるというひどいイジメを行ったあたしは、すぐに逃げ出してきていた。


もう自分がトイレに行きたかったことなんてすっかり忘れている。


「蘭、顔色が悪いけどどうしたの?」


なにも知らないクラスメートたちがあたしの様子を見て声をかけてきてくれる。


だけどそれに返事をすることもできなかった。


あたしは座ったままジッと自分の両手を見つめていた。


自分があんなことができる人間だったなんて思っていなかった。


汚水をぶちまけた瞬間、久志の悲鳴を聞いた。


それよりも大きな美鈴たちの笑い声を聞いた。


あたしはそれらを聞いていることが怖くなり、バケツを投げ出して逃げて来たのだ。


怖くて、まだ手が震えている。


だけど……一番怖かったのはきっと久志だったはずだ。


あたしはそう思い、なにも考えられなくなってしまったのだった。
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