幸せポイント
受験という大きな荷物がなくなった事で、とたんに自分が何をしたいのかがわからなくなった。


もちろん、高校に入学する理由はあったのだけれど、その理由さえ今では消えてしまいそうなほど小さな存在になっていた。


受験勉強を頑張り過ぎて少し疲れたのかな……。


きっと、それはよくある事なんだろう。


目の前の壁を乗り越えた事で、次の目標や意欲を失ってしまう。


これは良くあることだ。


あたしは自分の頬を軽く叩き、個室から出た。


あまり長時間トイレに入っていると美鈴たちからからかわれてしまう。


手を洗って出ようとした時だった。


壁を隔てた男子トイレからうめくような人の声が聞こえて来て、あたしはハンカチを持ったまま立ち止まっていた。


トイレに入っていて隣の声が聞こえて来たことなんて1度もない。


ということは、相手がよほど大きな声を出していると言う事だ。
< 7 / 236 >

この作品をシェア

pagetop