幸せポイント
「だけど、学校へ行かなかった蘭ちゃんを見て、ご両親や友達それに先生はどう思うかな?」


テンちゃんの言葉に、あたしの考えがスッとかき消えて行く。


誰かを幸せにするために、誰かを犠牲にしてはいけない。


昨日見つけたばかりの定義をすっかり忘れてしまっていた。


ポイントを稼ぐために、誰かを不安にさせたっていけないに決まっている。


今日みたいに沢山のポイントを稼げても、また減点されてしまうだろう。


「そっか、そうだよね……」


やっぱり、そう簡単にはいかないよね。


そう思っていると、テンちゃんの手があたしの頭を撫でていた。


とても暖かな手。


触れられていると安堵するような手。


「だけど、蘭ちゃんならきっと大丈夫。ちゃんと100ポイントを稼いで天国に行けると思うよ」


「本当に?」


「うん。だって、出会ってからの蘭ちゃんはとても頑張ってるもんね」


テンちゃんはそう言いニコッと笑った。


頑張ってる。


その言葉が胸に残る。


自殺する前の自分はどうだっただろう?


なにかを一生懸命頑張るなんて、していなかった。
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