幸せポイント
そう思っていると、力つきた久志のズボンから正樹が財布を引き抜いた。


黒い二つ折りの財布から千円札を何枚か抜き出す。


「さすが議員のお父さんを持つ久志君。小遣い沢山あるじゃん」


正樹がそう言い、空になった財布を久志の体の上に投げた。


議員のお父さん……。


そんなの知らなかった。


同時に疑問が浮かんだ。


久志の父親には権力がある。


それなら、自分に降りかかるイジメだって対処してくれるはずだ。


なのにどうして久志は1人でやられっぱなしなのだろうか。


地面に這いつくばっている久志を見て、わからなくなる。


こんな地獄のような現実、とっととぶち壊してしまえばいいじゃないか。


それだけのことが、久志ならできるはずだ。


「ほら、蘭」


美鈴にそう言われてハッと我に返った。


見るとあたしに千円札が3枚差し出されている。


「え……?」


「あんたの分。みんなで山分けだってさ」


みんなで山分け?
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