幸せポイント
あたしは自分の耳を疑った。


未だに地面に突っ伏したままの久志を見る。


久志は怯えた表情をあたしへ向けていた。


待って。


これじゃまるであたしがイジメの加害者みたいじゃん。


焦って逃げようとするが、途中で足が止まってしまった。


このまま逃げていいの?


美鈴も久志も無視してしまっていいの?


そんなことをすれば、きっと『幸せポイント』は入らないだろう。


そう思うと、逃げる事すらできなかった。


その場に立ちすくみ、途方にくれる。


「なにボーっとしてんの?」


香織が千円札を指先でもてあそびながらそう聞いた。


「早く受け取りなよ」
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