幸せポイント
美鈴があたしの手に千円札を押し付けて来る。


受け取れない。


だけど断るとどうなるのかわからない。


あたしはゴクリと喉を鳴らして唾を飲みこんだ。


緊張から、さっきから口の中はカラカラになっていた。


助けを求めて公園の外へ視線を向けるが、誰も通っていなかった。


「蘭!」


美鈴のイライラとした声にビクリと体が震え、体に押し付けられているお札を手に取ってしまった。


あ……。


瞬間、久志の目から色が消えたのがわかった。


ここに自分の味方なんていないのだと理解したのか、絶望と呼べる色に変わる。


「じゃぁ、またな」


お金を奪って満足したのか、正樹と美鈴たちはその場を後にしたのだった。
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