恋は突然に 意地悪なあなたの甘い誘惑

仕事部屋に戻ると、綾乃が戻ってきたことすら気づかず、和弘は作曲に没頭していた。

綾乃はミネラルウォーターを飲みながら、３５階からの夜景を眺めた。

（－　何してるんだろ…。）
そう言うと、綾乃は少し笑った。
（－　笑ったのなんてどれぐらいぶりだろ。）

「おい、チビもう出…。」
和弘は、振り返って綾乃の姿を捉えて、言葉を失った。

そこにいた綾乃に目を奪われた。

（－　誰だよ。これ。）

今まで、隠すように着ていたダボダボの服とは違い、Ｔシャツ一枚の綾乃はスタイルがいいのがわかった。
適度な胸に引き締まった足、少し濡れた髪の毛をかき上げた時に見えたメガネを外した吸い込まれそうな瞳、ミネラルウォータを飲む口元は色気さえ漂っていた。


和弘は慌てて目線をキーボードに戻した。
そして、それ以上目線を綾乃に向けることなく、
「おい、チビ、毛布おいといたから、そこで寝てもいいけど、うるさくて眠れないだろうから、隣の客間行け。」
和弘はそれだけ声をかけた。

「ありがとう。でも、あんたの音楽、なんか落ち着くからここにいていい？邪魔しないから。」

「…ああ。」