恋は突然に 意地悪なあなたの甘い誘惑
「…チビ?」
その狼狽した様子にさすがの和弘も言葉を止めた。

「ごめんなさい。」
消え入るように言った綾乃に和弘も言葉を失った。

「分かった。とりあえず、今日はいい。」
それだけを和弘は言った。

「じゃあ、着替えて10時には行きます。」
急に、瞳の曇った綾乃に和弘は戸惑っていた。


「綾乃ちゃん、おはよう。」
「おはようございます。ヒロさん。」
スタジオに入ると、先に来ていたヒロに声を掛けられた。
「昨日は大丈夫だった?和弘に遅くまで拘束されなかった?」
「あー。」
綾乃は苦笑いをした。
「あいつ、音楽の事になると見境ないから。」
ヒロも困ったもんだという顔をした。
「ヒロさんと、カズさんは高校の同級生なんですよね?」
「ああ、4人みんなそう。よくある軽音部ってやつ。」
ヒロはふわっとした笑顔を見せた。
「綾乃ちゃんは、大学2年だっけ?」
「はい。」

(- ヒロさんって、こんな地味なあたしにも優しく話してくれて優しい人だな。)
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