恋は突然に 意地悪なあなたの甘い誘惑
その言葉に、綾乃はビクっとしたが、温かい腕の中が心地よく、また涙が溢れた。

「悪い。さっききつい事言った。」
「…。」
綾乃は言葉を発することができずにいた。
和弘は後ろから綾乃を抱きしめたまま、
「お前見てると、なんかイライラして…。」
綾乃はその言葉にイラっとして、和弘の手を振りほどこうとした。
「イライラするなら、構わないでよ!」
涙を溜めた潤んだ瞳で和弘を睨んだ。
そんな瞳も、悲しみで揺らいでいた。
それが和弘にはわかった。

「あー!!お前、なんなんだよ。」
そう言うと、和弘は綾乃を胸の中に押し込めた。
「…あんたこそ何よ…。」
それだけ言うと、綾乃はまた涙が止まらなかった。

「違う。そんなになんで自分に自信がないんだよって事…。お前はお前だろ…。」
その言葉に綾乃は和弘を見上げた。
和弘は真っすぐ綾乃のを見ると、驚いた、まん丸の瞳の綾乃と目があった。
「お前はきれいだよ。」
綾乃は、顔が熱くなるのを感じた。
「チビチビって女と思ってないくせに!」
綾乃は慌てて叫んだ。
「そうなんだけどな…。」
和弘はそう言いながら、綾乃をまた見つめた。

綾乃は自分の心臓の音が耳の奥で鳴り響いていた。

「何よ!」
綾乃は和弘を睨んだ。
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