恋は突然に 意地悪なあなたの甘い誘惑
(やっぱり付き合ってるのかな……)

なぜか胸が締め付けられるような気がして、涙が零れ落ちそうになった。

(お前はお前だって言ってくれても、やっぱりあんたは大人の女がいいんじゃない。みんなお姉ちゃんみたいな人がみんないいんだよ……)

いつものように、和弘に敵意を持つことすら難しくなり、闇に落ちて行く感覚に目の前が白くなった。

「綾乃ちゃん!!」
遠くから呼ぶ声が聞こえたが、もうそこから意識は闇に引きずられていった。


和弘はいい大人になってどうして、綾乃に見せつけるみたいに麻衣子を抱き寄せたかわからずにいると、遠くから弘樹の叫ぶ声でハッと目を向けた。

そこには弘樹が抱き寄せるように、ぐったりと横たわる綾乃の姿が目に入った。

「綾乃!!」
自分でも無意識に和弘は走り出していた。

弘樹から奪い取るように、細く真っ青な顔をした綾乃を和弘は抱き上げた。
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