恋は突然に 意地悪なあなたの甘い誘惑

その返事にヒロは小さなため息を落とすと、
「ねえ、綾乃ちゃん。いろいろ疲れたでしょ？慣れない事ばかりで」

「そうですね……いまだにどうしてこんなことになったのか自分でもわからないですけど」
「無理しなくていいからね？もしも言いづらかったら俺からカズに話すから」
その言葉に綾乃はヒロを見た。
「俺から見ていても、綾乃ちゃんに無理をいいすぎだと思う」
「ありがとうございます。ヒロさんでも……」
そこまで言ってヒロの席の後ろから歩いてきたカズを見て綾乃は息を止めた。

「おい！ヒロ。そいつ甘やかすなよ」
いつもより、低いその声に綾乃はビクリと身体を震わすと、視線を下に向けた。

「カズ……甘やかすってお前……。今日も綾乃ちゃんに無理させて倒れただろ？お前のせいだってわかってるのか？」
いつも穏やかなヒロが今にも掴みかかりそうな程語気を強めた様子を見て、綾乃は慌ててヒロの腕を掴んだ。