私に触れて、そして殺して


「何度か…アパートに行ったんだ」



そう切り出してきたのはタツヤ
ソファに座り
タツヤが出してくれたコーヒーを口にした

遊びに来た時
必ずタツヤがコーヒーを淹れてくれていた
同じコーヒーなのに
タツヤが淹れてくれるコーヒーは美味しい



『…何度、か?』


私が知ってるのは一度だけ
三吉さんが話をしてくれた時だけだ


「うん。隣人の人に話したんだけど、凛子からの連絡はないし、コンビニもやってない…何かあったに違いないって、毎日のようにアパートに向かったんだ」


初めて知ることに、カップを持つ手に
チカラが入る
タツヤは私と別れた後も
アパートへ訪ねてきていたという
そして三吉さんから
引っ越したと聞いたという

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