私に触れて、そして殺して
「凛子?いないのかー?」
街へと向かう途中、男の声が聞こえた
凛子…、そうか、サラの名前だ
顔も見た目も、凛子はサラに似ていない
でも雰囲気がサラだった
俺は凛子にサラの面影を追っていた
兄貴も凛子もいない
また一人になったな
凛子の言葉が頭をよぎる
本当に待っているだろうか
サラに…、会いにいこう
もう何年も会っていない
会いに行ったらサラは
「何しにきたの?」「来るのが遅いわよ」と
変わらない態度で接してくれるだろうか
凛子が背中を押してくれた
それを無駄にはしたくない
もう二度と訪れることはない
記憶にない生まれ故郷をあとにした
【完】