私に触れて、そして殺して
まさか先輩とタツヤが
そういう関係だったなんて知らなかった
なんで?どうして?
タツヤが浮気?
そんなのはどうでもいいから
ここから早く逃げたい
でも、どうやって?
リビングを通らないと
部屋からは出られない
玄関のたたきが狭いから、と
タツヤの部屋に来たら
靴は必ずシューズボックスに入れていた
が、そのシューズボックスは
取っ手がアンティーク調になっていて
開けるのに一工夫必要で面倒
しかも、カチャン、と音付きだ
あんなのが玄関から聞こえたら
絶対に気づかれてしまう
私が悪いわけではない
悪いのはタツヤ
だが、惨めな姿を
先輩は笑うだろう
早く終われ、早く…
そう思いながら両手で耳を塞ぎ
ことが終わるのを待つ
もしかしたら寝室に移動してくるかも、と
静かにクローゼットの中へと身を隠した
耳を塞いでも
当たり前だが耳に入ってくる
タツヤの声も先輩の声も…
耳がなくなってしまえばいいと
思うくらい、私は耳を強く塞いだ