賭けをしようか
◆彼と私
「賭けをしようか」
彼は自身の動きを遅くして言った。
それに若干物足りなさを感じながら彼を見上げる。
目の合うその瞳から感情を読み取るのは不可能で、私は心の内で小さく舌打ちをした。
「…賭け、といいますと?」
彼の生ぬるい汗が私の胸におちて、それが肌に染み込んでいく。
「好きになった方が負け…はどうだろうか」
「……賭けということは勝った方にはなにかあるんですか?」
彼が私の身体を熱くする。
口から漏れる甘い声を必死に押し殺す。
「そうだなぁ。……じゃあ勝った方は負けた方を好きにできる、はどうだろうか?」
「……とても魅力的な話です」
彼の首に手を回し、再開を促すと彼はそれに応えるかのようにまた動きを速くした。
私の息づかいと彼の息づかいが混ざり合い一つになる。
そんなことでしか、私たちはお互いの気持ちを満足させることができない。
「それじゃあ、ゲーム開始だね」
・
・
・
「ーーーー。」
そういったのはどちらだったか。
< 1 / 2 >