夢かかげる星のエアル




海に近すぎて常に潮くさいし。

山と田んぼしかないし。

放課後遊ぶところなんてものもあるわけないし。

そんなの海で泳ぐか虫取りくらいだし。

ファッションビルも、映画館だってない。



道路を走っているのはかっこいい外車…なんてこともなく、てぬぐいを巻いたおっちゃんが操縦する農耕車だし。

たまに馬糞の匂いがして死んだ方がマシな気分になるし。

近所のおばさんたちとの距離が近すぎて、なんでも筒抜けになるのも田舎の嫌なところだ。


朝が来て昼が来て夜が来てまた朝が来るだけの変わらない日常。

―――変わったって思うのは、玄関を開けた瞬間にあ、稲が収穫されたんだって思った時くらいかもしれない。


好きなところなんかない。
山なんて、海なんて、そんなのもう見飽きて何も思わない。

ただあるだけ。
不便だし、すたれ切ってるし、プライベートのプの字もない。
…つまらない町だと思う。




「ハルカは?」

「え?」



なんて、また意識を飛ばして考え込んでいたら、今度はショウタが何か聞きたげな顔を向けてきていた。

ごめん、聞いてなかった、と開き直って答えると、彼はご親切にもう一度口を開き始める。




< 18 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop