夢かかげる星のエアル
海に近すぎて常に潮くさいし。
山と田んぼしかないし。
放課後遊ぶところなんてものもあるわけないし。
そんなの海で泳ぐか虫取りくらいだし。
ファッションビルも、映画館だってない。
道路を走っているのはかっこいい外車…なんてこともなく、てぬぐいを巻いたおっちゃんが操縦する農耕車だし。
たまに馬糞の匂いがして死んだ方がマシな気分になるし。
近所のおばさんたちとの距離が近すぎて、なんでも筒抜けになるのも田舎の嫌なところだ。
朝が来て昼が来て夜が来てまた朝が来るだけの変わらない日常。
―――変わったって思うのは、玄関を開けた瞬間にあ、稲が収穫されたんだって思った時くらいかもしれない。
好きなところなんかない。
山なんて、海なんて、そんなのもう見飽きて何も思わない。
ただあるだけ。
不便だし、すたれ切ってるし、プライベートのプの字もない。
…つまらない町だと思う。
「ハルカは?」
「え?」
なんて、また意識を飛ばして考え込んでいたら、今度はショウタが何か聞きたげな顔を向けてきていた。
ごめん、聞いてなかった、と開き直って答えると、彼はご親切にもう一度口を開き始める。