夢かかげる星のエアル
それ、ショウタがハルカに残ってほしいだけでしょ~、なんてリっちゃんの笑いが聞こえたところでまた考えた。
私は祖母と二人暮らしをしている。
両親は私が生まれて間もなく離婚して、赤ん坊だった私は父に引き取られた。…青海にやってきたのはその直後。ちょうど父方の祖父が他界し、祖母がこの青海で一人暮らしになるタイミングでのことだった。
小さい頃の記憶は曖昧だけど、それなりに楽しかったような気がする。
しばらく三人で暮らしていた。
さらに言えばよく私は父の背中を見ていた。
はじめは大きくてたくましいそれだったが、年を重ねるごとに机に向かう彼の背中が丸くなっていった。小さく、丸く。私は日に日に、窶れてゆく彼から目を逸らしがちになったことをよく覚えている。
そんな父が亡くなったのは、五年前の寒い雪の日のことだ。死因は過労。優しい人ではあったが、多少無理してしまう弱い人間だった。
「ばーちゃん、そーだよなあ」
確かに、祖母を一人にするのは気が引ける。
そもそもこんななにもないつまらない町から出る決心すらもついてもない。
このままだと、どっちみちこの田舎町を離れるという選択肢はなくなりそうだな、なんてまるで他人行儀に頬杖をつく私……、
だが、
「ハルカはしたいこととかないの?」
リっちゃんが痛いところをついてきた。
「…したいこと、ねえ。あんのかな、そんなの」
「私もそれで悩んでるの。とりあえずいい大学行っておけば間違いないってお母さんは言うんだけど、本当にそれでいいのかなって」
「リカコ、前教師になりたいって言ってなかったっけ?」
「ああ…それね、私にできる自信がないっていうか…」
「できる、じゃなくて、やるかやんないか、じゃねえの?」