夢かかげる星のエアル
―――風がふく。
肌にまとわりついてうっとおしい潮風だ。
誰がこんな海なんて造ったんだ。
なんのためにこれが必要なのか。
魚なんて食べられなくてもいい。
別に雨なんて降らなくてもいい。
外にいるだけなのに、吹き付けてくる潮風で髪は痛むし、自転車なんてすぐ錆びるから乗りたくない。
自動車だって、ラジエーターが潮で腐敗したって騒いでいるおじちゃんを見たことがある。それにたまにわかめまで飛んでくるし、ありえない。
そしてなによりこの辺りはほぼ坂道なのがしんどい。
これを十七年間毎日往復しているのだから、私のふくらはぎは相当鍛えられている。
バスも通っているわけないし、電車なんて数時間に一本だし、てか最寄り駅までも自転車で一時間かかる距離だし、坂道だからそもそも自転車なんて乗るには困難だし。
それなのに私の家はこのあたりでも一番遠い山の方にあるのだから、もー不便。
歩いて四十分はかかる。
もう…それも慣れたよと思ってしまう私自身にかなしくなった。