夢かかげる星のエアル





気づけばすぐに辺り一面の田んぼ道になった。

あと一か月ほどで地獄の田植えが始まる。

そう思ってため息は吐いたのは、私の祖母―――フネばーちゃんに農作業を問答無用で手伝わされるからだ。


“ハルカはばーちゃんさ仕事を継ぐんだい!”


それに、そんなことを最近よく言われる。

フネばーちゃんの家系は代々農家だった。夫である祖父は婿養子になったみたいだし、跡取りだったはずの父は五年前に亡くなっている。だから必然的に仕事を引き継ぐのは私になる。

そっか、そうだよな、とも思う。私がどうこう考えることもなく、フネばーちゃんの言うことを素直に受け入れる方が建設的なのかもしれないとも思う。

自分で決断しなくていいから楽だし、これといってやりたいこともないからちょうどいいのかもって。


しかも農家って儲かるみたいだし。
頭使わなくてもできそうだし。

自分から目標を立てて学ばなくても、フネばーちゃんに教えてもらえればそれで済んでラッキーだ。

最悪それでもいい。人生を決断する責任を“家の都合”に擦り付けてしまった方がずっと楽だ。



この町が特に好きなわけではない。

でも、外に出たら、自分で意思決定しなくてはならない機会が増えてくる。

そう考えると、この青海の方がマシに見えなくも、ないかな。





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