夢かかげる星のエアル
四月、午前四時をまわった山間には、未だはりつくような寒さが残っていた。
柔らかい土を踏みつける感覚。時に生えていた苔も踏みしめて私は駆けていた。
森の葉っぱをかき分け、懐中電灯を頼りに一目散。
獣だって出るかもしれないし、そもそも流星が落ちたかもわからない。それに場所なんてわかるはずもない。
下手したら戻れなくなっちゃうかもしれないのに、私の中に恐怖の概念はまったくなかった。
それ以上にひたすらに探さなくちゃって気持ちが上回って仕方がない。こんなにがむしゃらになったことなどない。本能が動けと命じているような、一種の義務感に私は無限に急き立てられる。
全身に汗をかいた。
誰かが背中を押してきているような気がした。
見えない存在が、私に行けと、言っている。
神秘的な光に意識が強く向いてしまったのもなにかの暗示だったのかもしれない。食い入るように見た。見逃しちゃ、いけない気がした。今でも鮮明に思い出せる。さまざまな色をのせた、一筋の流星は————ーなにかを、運んできたんだ。
踏みつけた拍子に石ころがどこかへ飛んで行った。
木々の緑の匂いが鼻にまとわりついてくる。
虫の音。ミミズクでもいるのか、静かな動物の鳴き声も聞こえてくる。
そんな裏山を私はただ一人駆けていた。なにをこんなに必死になってるんだってくらいに息があがる。
それでも、探さなきゃって思ったの。
ガサリ、私は最後に大きく葉っぱをかき分けた。
ままならない呼吸を整えながら、前かがみになって汗をぬぐう。
心臓が飛び出しそうなくらいに大きな脈を打っていた。まだ、全身に強いなにかが駆け巡っている。なんの物質なのか、なにが分泌されたのか、自分でも理解できない興奮だった。
それに、なんとなく本能が、“たどり着いた”と言っているような気がした。
一度消えたはずの光が、ずっとそこで待っていたように。