夢かかげる星のエアル




いかにも近代的、いやそれ以上なつくりをしているロケットは、どんなに頑丈でも普通なら大破しているはず。

航空機墜落のニュースを見たことがあるが、辺りの森林は焼け、山肌には大きな穴が開き、機体は壊滅的。爆発でほとんどのパーツが粉砕されていてそれはむごい光景だった。

しかも乗客も爆発に巻き込まれ、一たまりもなかったというし。




それなのにどうしてだろう。

なんせ流星と勘違いしたくらいだ。

航空機の墜落よりも勢いが明らかに強いはずだったのに、木々が数本倒れているだけ。

大爆発もなかった。地震かと思う振動だけ。

もっと言えば、こんなにも近くに落ちている。裏山と私の家なんて目と鼻の距離。家が全壊しても可笑しくない衝撃があったはずなのにそれもなく、加えてここはクレーター一つついていない。




ロケットも羽の部分が軽く損傷しているだけ。

外見だけで判断すると、原型を保っているように見える。強いて言えば、パチパチと電気が走っているのみ。ぺっちゃんこにすらなってない。




「どういうこと…?」




なんて、いかにも最先端をいっていそうな機体に視線を寄せる。

そのシンプルなボディには『B10894』という謎の暗号が記されていた。

そのほかにも何か書かれてはいるが、どうやら私には読めない種類の言語のようだ。なんて書いてあるか分からない。




一歩、前に出て詳しい状況を把握しようと思った。

まだ心臓の高鳴りが収まらない。だってそのはず、こんな正体不明なものが空から降ってきたんだもん。正気なんかじゃいられない。

とっさの判断だなんて私には無理だった。臨機応変な賢さなんて持ってないから、こういう時は単純にも気が動転してしまう。





────眠いという感覚はどっかにいった。今日はもう二度寝できないかもしれない。

だってこんなにもアドレナリンが全開に出てる。半端パニックになりながら状況を再度把握した。




うん。森の中、うまい具合にできたスペースに不時着(っていうより墜落)したロケット。その横には生死不明な少年が倒れている。

幸い、ちゃんと手足が、ある。くっついてる。ちゃんと人の形もしている、が…、

本当、これ、どうすれば…。









ギュイイイ…ン…。

『探査任務———ジー……』『ワープホールが———ジー……』『バッテリー残量、ゼ―――…ジー…』




その時だった。

突如聞こえてきた、途切れ途切れの謎のガイダンス音。私は「なになになになに?!」とただ慌てふためいた。





それはロケットの中から。

私が思うに、最近テレビで話題になっている、あの受付案内ロボットのそれによく似ていた。

「おはよう」「こんにちは!」「こんばんはっ」なんて生温いものを想像していたのに、機体内部に内蔵されているシステムは、そんなに甘ったれた文句を言ってはくれなかった。





内容が理解できない。

ところどころ電波不調で内容が聞き取れないし、それに不思議なことに何故か言語は日本語だった。驚いて肩を震わせる私には、もうなにがなんだかさっぱりだ。



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