夢かかげる星のエアル
「お前はなんだ!“アノニマス”の一派か!?」
「あ、あのに…ま?え?」
だけど、その綺麗な顔は、まるで逆鱗にふれたように逆立っている。
空気を張り詰めさせ、少しも心を許す様子なく。
氷のような表情。ギリッと口元に力をいれて。まるで人間を警戒する野良犬のように静かな威嚇を見せてくる。
全身から湧き出てくる冷たい殺気。こんなに冷たい顔を見たことはないと思った。一瞬の安らぎもなく、常に神経を張り巡らせる。
青く綺麗な瞳は、その輝きを取り入れることなく、刃のように尖って悲しそうに見えた。何も信用していないような、自分以外何もかも敵だというような。
勿体無い。
そんなに素敵な瞳を待っているのに。
それは、身体に焼きつけられた反応。
生まれながらにして周囲を警戒して生きてきた動物のように。
きつく、
痛く、
身も心も荒みきって。
そんな彼を見て、何故か私の方が苦しくなった。
「僕をっ…罠にかけ…っつ、」
「…っ!」
そうして、身体を損傷しているのか脇腹部分を押さえて立ち上がろうとする男に、私はまた目を見開いた。
いや、生きていたこと自体にも本当は驚きたかった。良かった、一命をとりとめたんだって……でも、それも大袈裟な言葉になりそうだ。
言ってみれば、隕石が地球に落ちてくるくらいほどの速度でロケットが墜落したのだ。それなのに彼はあまりに、軽傷だった。
どうなってる?
“アノニマス”ってなに?
まるで混乱した。
それは、少年の来ている服装にも。
だってなんでもない一般人が、シルバー一色のスポーツスーツのようなものを着るわけがない。
肩の部分には、縫い付けられている黒く頑丈な革。身体にぴったり張り付くスタイリッシュなデザインのそれは、いかにもパイロットであると主張しているも同然。
それに、胸元にはなにかの紋章が入っていた。
どこの国の国旗でもない、見たことがない形だったけれど、気になるのはやはり、日本語を話してることだった。